海外進出するなら知っておきたいインコタームズ2020

海外進出するなら知っておきたいインコタームズ2020

インコタームズ(Incoterms)は、国際商業取引において買い手と売り手が取り決める貨物の引渡し条件を標準化する目的で、国際商業会議所(ICC)が制定した国際商取引ルールです。インコタームズ2020は、過去のバージョン(2010年版)から一部改訂されています。

この記事ではインコタームズ2022の内容を詳しく見ていきます。

インコタームズ2020のルールと分類

インコタームズ2020には、11のルールがあります。これらは、販売条件の違いに応じて、E、F、C、Dの4つのグループに分類されています。

E(出発地での引渡し)

EXW(Ex Works): 売り手は、貨物を自身の工場や倉庫で引き渡します。買い手は輸送手段を手配し、輸送コストやリスクを負担します。また、買い手は輸出入手続きも行います。

F(主要輸送費用未払い)

FCA(Free Carrier): 売り手は、指定された場所で貨物を輸送手段に引き渡します。以降の輸送リスクは買い手が負担します。買い手は輸送手段を手配し、輸送コストを負担します。輸出手続きは売り手が行い、輸入手続きは買い手が行います。

FAS(Free Alongside Ship): 売り手は、貨物を指定港の船の横に引き渡します。以降の輸送リスクは買い手が負担します。買い手は輸送手段を手配し、輸送コストを負担します。輸出手続きは売り手が行い、輸入手続きは買い手が行います。

FOB(Free On Board): 売り手は、貨物を指定港の船上に引き渡します。以降の輸送リスクは買い手が負担します。買い手は輸送手段を手配し、輸送コストを負担します。輸出手続きは売り手が行い、輸入手続きは買い手が行います。

C(主要輸送費用払い)

CFR(Cost and Freight): 売り手は、輸送費用を負担し、貨物を指定港に運びます。輸送リスクは買い手が負担します。売り手は輸送手段を手配し、輸出手続きを行います。輸入手続きは買い手が行います。保険は買い手が手配する必要があります。

CIF(Cost, Insurance and Freight): 売り手は、輸送費用と保険料を負担し、貨物を指定港に運びます。輸送リスクは買い手が負担します。売り手は輸送手段を手配し、輸出手続きと保険手続きを行います。輸入手続きは買い手が行います。

CPT(Carriage Paid To): 売り手は、輸送費用を負担し、貨物を指定場所に運びます。輸送リスクは買い手が負担します。売り手は輸送手段を手配し、輸出手続きを行います。輸入手続きは買い手が行います。保険は買い手が手配する必要があります。

CIP(Carriage and Insurance Paid To): 売り手は、輸送費用と保険料を負担し、貨物を指定場所に運びます。輸送リスクは買い手が負担します。売り手は輸送手段を手配し、輸出手続きと保険手続きを行います。輸入手続きは買い手が行います。

D(到着地での引渡し)

DAP(Delivered At Place): 売り手は、貨物を指定場所で引き渡し、輸送費用とリスクを負担します。ただし、輸入手続きや費用は買い手が負担します。売り手は輸送手段を手配し、輸出手続きを行います。買い手は輸入手続きを行います。

DPU(Delivered At Place Unloaded): 売り手は、貨物を指定場所で荷降ろし後に引き渡し、輸送費用とリスクを負担します。輸入手続きや費用は買い手が負担します。売り手は輸送手段を手配し、輸出手続きを行います。買い手は輸入手続きを行います。

DDP(Delivered Duty Paid): 売り手は、貨物を指定場所で引き渡し、輸送費用、リスク、輸入手続きや費用を全て負担します。売り手は輸送手段を手配し、輸出手続きと輸入手続きを行います。買い手は受け取りの準備をします。

インコタームズ2020の主な変更点

インコタームズ2020では、セキュリティ関連の要件が強化され、貨物の輸送中に必要なセキュリティ手続きに関する責任と費用の分担が明確に定められました。これによって、輸送中の貨物のセキュリティが向上しています。
各販売条件の変更点についてもご紹介します。

  • DAT(Delivered At Terminal)がDPU(Delivered At Place Unloaded)に変更され、荷降ろし場所の柔軟性向上しています。
  • FCA(Free Carrier)ルールにおいて、買い手と売り手がB/L(船荷証券)の発行について別途合意することが明示されました。これにより、B/Lの取得が容易になり、買い手が支払いを行う際のリスクが軽減されるようになりました。
  • CIP(Carriage and Insurance Paid To)ルールでは、最低保険要件が引き上げられました。これにより、買い手が受ける保険の範囲が拡大され、保護が強化されます。ただし、CIF(Cost, Insurance and Freight)ルールの最低保険要件は変更されていません。

インコタームズ2020の適用方法と注意点

インコタームズ2020は、買い手と売り手が取引条件を明確に定める際に役立ちます。適切なルールを選択することで、双方の責任とリスクを適切に分担し、国際取引の円滑化が図られます。インコタームズを適用する際は、以下の点に注意してください。

  • 明確な取引条件: 買い手と売り手は、取引条件を明確に定め、書面で合意することが重要です。これにより、両者の権利と責任が明確になり、トラブルを未然に防ぐことができます。
  • 適切なルールの選択: 取引条件や輸送方法、貨物の種類に応じて、適切なインコタームズルールを選択してください。ルールの選択が不適切な場合、リスクや責任の分担が不均衡になり、トラブルが発生する可能性があります。
  • インコタームズ2020の明示: 取引契約書や見積書、請求書などの書類に、適用するインコタームズルールを明記してください。また、バージョン(2020年版)も明記することで、どのバージョンが適用されるかを明確にし、誤解を避けることができます。

RemitAidでは見積もりの時点からインコタームズに関する記載を行い、海外取引先と条件をすり合わせることをおすすめしています。

また、インコタームズは、買い手と売り手の間での責任とリスクの分担を定めるものであり、もちろん商品の品質や価格についてはもちろん、知的財産権、法規制、紛争解決など、その他の商取引に関する事項についてついて言及されているものではありません。
従って、別途契約等で取り決める必要があるため注意が必要です。

まとめ

インコタームズ2020を適切に適用することで、国際取引におけるリスクを軽減し、効率的で安全な取引を実現することができます。インコタームズは、国際取引の基本となるルールであるため、買い手と売り手双方が十分に理解し、適切に活用することが重要です。