インドのキャッシュレス化が進んだ背景とは?

インドのキャッシュレス化が進んだ背景とは?

インド市場ではキャッシュレス決済が急速に拡大し、路上のお店でもモバイルペイメントが利用されるぐらいにまで浸透しています。今回はインドの市場でキャッシュレス決済が進んだ背景についてまとめてみました。

高額決済の排除

キャッシュレス化を促した1つ目の要因は、モディ氏が2016年に高額紙幣を市場から排除する決定を下し、政治的な闇資金を一掃すると宣伝したことです。これにより、現金で運営される小規模事業に大きなショックがもたらされ、デジタル決済への移行が促されました。

実際にインドの地方の村にある店舗でも、デジタル決済による売上となるお店ほどに全国的な広がりをみせています。また、デリーの市場では半分程度がデジタル決済での売上といった店舗も出てきているそうです。

インド版マイナンバーカード「アーダール」の浸透

もう1つの主な要因はインド政府による「アーダール」と呼ばれる固有の識別番号の割り振りキャンペーンです。アーダールは2009年に始まり、モディ首相がプライバシー懸念に関する法的課題を乗り越えて取り組みを加速しました。現在、驚くべきことにインド成人の99%が生体認証ID番号を保有し、発行総数は13億を上回ります。

アーダールは銀行口座の開設を容易にし、インドの即時決済システム「統合決済インターフェース(UPI)」の基盤となっています。UPIはインドの中央銀行による取り組みで、非営利団体が運営し、数百の銀行と数十の決済アプリのサービスを取引手数料無しで提供しています。現在、UPIは3億人近い個人と5000万近い業者に利用され、デジタル決済は小さな金額の支払いにも使用されており、50%近くが少額またはマイクロ決済に分類されています。

新型コロナ禍では、世界的にデジタルインフラへの依存度が一層高まりました。インド政府は世界最大規模のワクチン接種の推進管理と金銭的支援を提供するために、アーダールのID番号をうまく活用したことでも話題となっています。

アーダール識別番号、銀行口座、携帯電話のアプリといったデジタルインフラの基本的な柱が整備されていることで、サービスの提供が容易になっています。漁業や農業をはじめとしたデジタル化の遅れている産業でも、これらのデジタルインフラが活用されることが期待されています。

まとめ

いかがだったでしょうか?
高額紙幣の廃止、アーダール識別番号の普及、新型コロナ禍によるデジタルインフラへの依存度の高まりといった複数の要因が相互作用して、インド市場でのキャッシュレス化が急速に広がったと考えられます。

また、インド中央銀行がUPIシステムの推進を行い、さらに、数百の銀行と数十の決済アプリがUPIシステムを利用して、取引手数料無しでサービスを提供しています。消費者や業者にとってデジタル決済が手軽に利用できるインフラが整備されていると言えるでしょう。

インドに進出する際には現地のニーズにあわせた決済手段が1つのポイントになるかもしれません。